シングルセル遺伝子発現Flex解析
シングルセル遺伝子発現Flex*1(Fixed RNAプロファイリング)解析とは
ホルマリン固定により検体採取直後の遺伝子発現状態を保持したまま、約2万遺伝子*2のプローブを用いて、1細胞ごとに転写産物(RNA)の種類と量を網羅的に検出します。手術検体などの組織採取直後に細胞単離までの実施が難しい検体や、短時間で発現が変化する遺伝子の検出(短時間での時系列サンプリング)など、従来のシングルセルRNA-seq解析では時間的な制約により困難だった解析が実施できます。
また、細胞単離の過程でダメージを受け失われやすい細胞や、凍結保存した検体など、これまで技術的な課題があった解析も対応可能です。さらに、従来のシングルセルRNA-seqと同等以上の検出感度を有しており、低発現遺伝子の検出やより詳細な細胞タイプの分類が期待できます。
解析の原理上、得られたシーケンスデータはノイズを含む発現情報である場合が散見されます。その結果、データ解析方法によっては結果の解釈をミスリードする可能性が高まるため十分な注意が必要です。適切な細胞調製はもちろんですが、個々のシーケンスデータに合わせた最適なデータ解析が特に重要になります。
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用途
以下のような検体でのシングルセルトランスクリプトーム解析に最適です。
- 時間的な制約により、組織採取直後に細胞単離まで実施が困難な臨床検体
- 凍結保存した検体注1
- 細胞単離の過程でダメージを受け失われやすい細胞から成る組織検体
- 短時間での発現変化が想定される検体(短時間での時系列サンプリング検体)
- 直径30um以上の細胞(シングル核トランスクリプトーム解析による実施)
- 注1:細胞状態によっては解析できない場合があります。
※関連する解析サービス
シングルセルRNA-seq解析 >
高感度なシングルセル完全長total RNA-seq解析 >
シングルセルレパトア解析+シングルセルRNA-seq解析 >
シングルセル空間トランスクリプトーム解析 >
スポット型空間トランスクリプトーム解析 >
このような方に
- 従来のシングルセルRNA-seqでは解析できずにお悩みの方
- 手術検体の採取後に細胞単離を実施する時間がない方
- 単離した細胞の生存率が低くてお困りの方
- 短時間で発現が変化する遺伝子の検出をご希望の方
- 4検体以上の多検体解析でコストを抑えて解析されたい方
- 自身の研究目的に最適な実験デザインの検討から始めたい方
- 共同研究先の対応スピードや、一方向的な情報科学的解析手法にお悩みの方
- 最適なデータ解析手法や適切な統計手法の選択と実施に不安がある方
- バックグラウンドや不自然な解析結果にお悩みの方
当社の特徴
- 共同研究に近いタイプの受託解析サービス(定型的や簡易的な受託解析ではありません)
- 研究目的を踏まえ論文化を志向した高品質な解析サービス
- ウェット実験とデータ解析の両分野の経験豊富な専門技術者が直接対応
- 生物学的意義を踏まえたデータ解析サービス(詳細はこちら)
- 解析結果の統計学的および生物学的解釈のサポート
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解析例1 ヒト肺腺がんの治療前後におけるシングルセル遺伝子発現比較
ヒト肺腺がん及び治療後の肺腺がんに由来する細胞のシングルセル遺伝子発現Flexデータ*3を用いて、細胞亜集団の分類、細胞タイプ推定を行った後、2群間における細胞割合の変化と発現変動遺伝子(DEG)の検出を実施しました。
クラスタリング結果 (35,788 cells, 2群、UMAP)
クラスタリング結果 (35,788 cells, 2群、UMAP)
シングルセル遺伝子発現Flex(Fixed RNA プロファイリング)解析により取得された高次元データである網羅的な発現情報(発現プロファイル)を、情報のロスを極力抑えつつ低次元に変換しました。サンプル間の誤差(batch effect)を低減させながらデータを統合し、発現プロファイルの類似度により細胞をクラスタリングした結果をUMAPにより二次元上にプロットしました。1つの点が1個の細胞を示しています。各点には細胞の発現プロファイルが紐づいており、発現プロファイルが類似しているほど各点は基本的には近くに配置されます。細胞タイプ名に続く()内の数字はクラスタ番号を示します。
各クラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)
各クラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)
各細胞タイプに特徴的な遺伝子をヒートマップを用いて可視化しました。縦軸は遺伝子に、横軸は各細胞タイプに対応しています。発現量が多い遺伝子を赤色、少ない遺伝子を青色で示しました。
各クラスタにおける遺伝子の発現レベル(Violin Plot)
各クラスタにおける遺伝子の発現レベル(Violin Plot)
特徴的な遺伝子の発現レベルをバイオリンプロットで図示しました。縦軸は遺伝子発現量、横軸は各細胞タイプ、バイオリン型の幅は密度分布(プロットされた細胞の密度)を示しています。
各クラスタの細胞数と細胞タイプ(抜粋)
各クラスタの細胞数と細胞タイプ(抜粋)
各クラスタの細胞タイプと細胞数(全検体、検体ごと、群ごと)を表にまとめました。G1群(S1, S2)は肺腺がん由来細胞、G2群(S3, S4)は治療後の肺腺がん由来細胞を示します。
細胞のクラスタリング結果(治療前 / 治療後)
細胞のクラスタリング結果(治療前 / 治療後)
細胞のクラスタリング結果を治療の前後(G1群、G2群)に分けて表示しました。上段は肺腺がん由来細胞、下段は治療後の肺腺がん由来細胞のクラスタリング結果を示します。
各クラスタの細胞構成比(治療前 / 治療後)
各クラスタの細胞構成比(治療前 / 治療後)
各細胞タイプの細胞構成比を治療の前後(G1群、G2群)に分けて表示しました。縦軸は各群の全細胞数を1とした時の各細胞タイプの割合、横軸は各細胞タイプを示します。治療後の肺腺がん由来細胞では、腫瘍細胞、肺胞上皮細胞、中皮細胞が増加し、線維芽細胞、Treg、CD8+ T細胞などが減少する傾向が見られました。
2群間の発現変動遺伝子(抜粋)
2群間の発現変動遺伝子(抜粋)
2群間の発現変動遺伝子をリスト表示しました。クラスタ毎に2群間で発現に差のある遺伝子を網羅的に抽出可能です。表は腫瘍細胞の群間発現変動遺伝子を表示しています。
発現変動遺伝子の発現分布 (Feature Plot)
発現変動遺伝子の発現分布 (Feature Plot)
2群間の発現変動遺伝子の発現分布を治療の前後(G1群、G2群)に分けて可視化しました。治療後の肺腺がん由来細胞では、肺胞上皮細胞に特徴的なSFTPCの発現が増加する一方でFOSの減少が見られました。
発現変動遺伝子の発現レベル (Violin Plot)
発現変動遺伝子の発現レベル (ViolinPlot)
2群間の発現変動遺伝子の発現レベルをバイオリンプロットにより可視化しました。縦軸は遺伝子の発現量、横軸は各細胞タイプを示します。各細胞タイプのプロット左側(赤色)は肺腺がん、右側(緑色)は治療後の肺腺がん由来細胞のプロットを示します。
解析フロー
ハイブリダイゼーション
ライブラリ調製
シーケンシング
シーケンスデータ 発現量推定・正規化
クラスタリング
発現変動遺伝子抽出
細胞タイプ推定
各種高次解析 解析結果
検体調製の概要
(*) 専用キットによる作業が必要です。
受入物
① 固定細胞/核懸濁液から | ② シーケンスデータから | |
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受入物 | ホルマリン固定済みの細胞または核懸濁液 | シーケンスデータ(FASTQファイル) |
生物種 | ヒトまたはマウス | ヒトまたはマウス |
受入条件 |
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その他 |
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以下の情報をお知らせください
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解析条件
- 解析対象細胞数(目安): 数百細胞〜12.8万細胞
- 細胞当たりのリード数 : 研究目的に最適なご条件をご提案します。
- データ解析 : 研究目的に最適な手法で実施します(Batch effect等の各種補正対応)
納品物
- 解析報告書
- シーケンスデータ
- 細胞クラスタリング結果
- 各クラスタの細胞数データ
- 各種遺伝子の発現データ(発現量、発現分布)の可視化図
- 各種遺伝子リストなど
- 解析報告書
- 細胞クラスタリング画像データ
- 各クラスタの細胞数データ
- 各種遺伝子の発現データ(発現量、発現分布)
- 各種遺伝子リストなど
※実際の納品物はご依頼内容により変わります。
価格・納期
ご依頼の解析内容により異なりますので、詳細はこちらよりお問い合わせください。
ご注意事項
TCR、Ig J及びV領域、リボソームタンパク質、HLA、KIR、lncRNA等の遺伝子は検出できません。
受入データを品質検査した結果、解析をお引き受けできない場合があります。
お問い合わせ
こちらよりお問い合わせください。
専門技術者が原則24時間以内にご連絡します。(土日祝日は除く)
*1 10x Genomics社の商品名または登録商標です。
*2 TCR、Ig JおよびV領域、リボソームタンパク質、HLA、KIR、IncRNAなどの遺伝子はプローブに含まれません。
*3 10X Genomics社より計測データをご提供頂きました。