シングルセルRNA-seq受託解析

Single Cell RNA-seq解析とは

近年の急速な分析技術の進歩により、細胞や分子の性質を、集団の平均値としてではなく、一つひとつの細胞や分子の個性を維持したまま解析することが可能になりました。
シングルセルRNA-seq解析では細胞集団の転写産物を1細胞ごとに網羅的に解析します。そのため、細胞集団を構成する細胞がどう分類できるかが未知のままでも、細胞集団を亜集団にクラスタリングして特徴を抽出することが可能です。
平均値の解析(通常のRNA-seq解析)では他の大多数の細胞のシグナルに埋もれて検出が困難な、希少細胞における発現変化も検出可能です(解析例3参照)。また、発生過程や細胞リプログラミング過程における細胞系譜(cell lineage)を詳細に追跡できます(Treutlein et al.)。

※受託解析サービスの詳細はこちら

用途

  • 1細胞レベルでの遺伝子発現解析
  • 細胞集団の異質性(heterogeneity)評価
  • 多数の細胞中に混在する少数細胞の発現変化の検出
  • 細胞種推定*1(未知の細胞種検出を含む)
  • 擬時間(pseudotime)解析による分化経路推定

当社の特徴

  • 共同研究に近いタイプの受託解析サービス(定型的な受託解析ではありません)
  • ウェット実験とデータ解析の両分野の経験豊富な専門技術者が直接対応
  • 各種シングルセル化法・ライブラリ調製法や、各種シークエンスデータの解析に対応
    (10x Genomics社 Chromiumシステム*2、BD社 Rhapsodyシステム*3等)
  • 生物学的意義を踏まえたデータ解析サービス(詳細はこちら
  • 解析結果の統計学的および生物学的解釈のサポート

※「当社が選ばれる4つの理由」はこちら

このような方に

  • 参考論文と同じような解析を自分のサンプルで実施したい方
  • 自分の研究目的に最適な実験デザインの検討から始めたい方
  • 簡易解析による解析結果と生物学的な仮説との間に相違があり、結果の解釈にお困りの方
  • 共同研究先の対応スピードや、一方向的な情報科学的解析手法にお悩みの方
  • 最適なデータ解析手法や適切な統計手法の選択と実施に不安がある方

解析例1   細胞集団のクラスタリング・発現変動遺伝子抽出

ヒト末梢血単核細胞(リンパ球、単球などを含む血球細胞)のSingle-cell RNA sequenceデータより、細胞亜集団の検出、発現プロファイルの取得、発現変動遺伝子(DEG)の抽出を行いました。

クラスタリング結果 (UMAP, 8,381 cells)

クラスタリング結果 (UMAP, 8,381 cells)

クラスタリング結果 (UMAP, 8,381 cells)
  0.  1,814 cells
  1.  1,354 cells
  2.     972 cells
  3.     954 cells
  4.     809 cells
  5.     761 cells
  6.     421 cells
  7.     368 cells
  8.     340 cells
  9.     221 cells
10.     218 cells
11.       67 cells
12.       62 cells
13.       20 cells

PCA(主成分分析)により、高次元のデータ(ベクトル)である発現プロファイルを、情報のロスを極力抑えつつ低次元に変換しました。クラスタリング結果をUMAP*4により二次元上にプロットしました。

クラスタリング結果 (UMAP, 8,381 cells)
0. 1,814 cells 1. 1,354 cells 2. 972 cells
3. 954 cells 4. 809 cells 5. 761 cells
6. 421 cells 7. 368 cells 8. 340 cells
9. 221 cells 10. 218 cells 11. 67 cells
12. 62 cells 13. 20 cells

PCA(主成分分析)により、高次元のデータ(ベクトル)である発現プロファイルを、情報のロスを極力抑えつつ低次元に変換しました。クラスタリング結果をUMAP*2により二次元上にプロットしました。

各クラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

各クラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

各クラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)
各クラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

各クラスタで特徴的な遺伝子をヒートマップを用いて可視化しました。 縦軸は遺伝子に、横軸は各クラスタに対応しています。発現量が多い遺伝子は赤色、少ないものは青色で示しました。

各クラスタの発現変動遺伝子抽出結果の一例

各クラスタの発現変動遺伝子抽出結果の一例

cluster gene
symbol
avg.exp
cluster
avg.exp
remaining
log FC p value adjusted
p value
positive
in
cluster
positive
in
remaining
0 CD14 6.037 0.178 1.788 0 0 0.830 0.066
1 CCR7 2.976 0.772 0.808 8.58E-234 1.57E-229 0.651 0.224
2 IL7R 7.074 2.168 0.936 8.86E-208 1.62E-203 0.829 0.384
3 CD8A 3.308 0.546 1.025 0 0 0.747 0.124
4 CD79A 17.334 1.004 2.214 0 0 0.989 0.146
5 CCL5 38.231 3.586 2.147 0 0 0.954 0.278
6 IGKC 75.036 8.003 2.134 1.21E-199 2.23E-195 0.798 0.352
7 GZMA 10.220 1.919 1.347 1.04E-224 1.90E-220 0.970 0.207
8 GNLY 80.282 1.961 3.312 0 0 0.959 0.198
9 HLA-DQA1 27.911 2.616 2.079 7.01E-276 1.29E-271 1.000 0.386
10 FCGR3A 15.407 0.488 2.400 3.33E-282 6.11E-278 0.986 0.090
11 IRF7 16.354 0.350 2.554 5.36E-238 9.83E-234 1.000 0.138
12 PPBP 50.743 0.049 3.898 2.89E-119 5.29E-115 0.919 0.018
13 ITGA2B 0.532 0.029 0.398 9.89E-10 1.81E-05 0.300 0.006
cluster クラスタ番号
gene symbol 遺伝子名略号
avg.exp cluster 該当クラスタのすべての細胞における各遺伝子の平均発現量
avg.exp remaining 該当クラスタ以外のすべての細胞における各遺伝子の平均発現量
log FC 発現変動比
p value 有意確率
adjusted p value 補正した有意確率
positive in cluster 該当クラスタ内で発現している細胞の割合
positive in remaining 該当クラスタ以外のすべての細胞の内、発現している細胞の割合

各クラスタに特徴的な発現変動遺伝子の一部を列挙しました。この様にSingle-cell RNA-seq解析では、細胞集団の組成に関する事前情報なしにクラスタリングし、特徴的な遺伝子の発現変化を抽出する事ができます。

各遺伝子の発現分布

各遺伝子の発現分布

各遺伝子の発現分布

特徴的な遺伝子の発現分布を図示しました。クラスタに特徴的な遺伝子、複数のクラスタで高発現している遺伝子を視覚的に確認できます。この様な発現プロファイルやその他の解析をもとに、各クラスタの細胞種を推定しました。

各クラスタにおける遺伝子の発現レベル(Violin plot)

各クラスタにおける遺伝子の発現レベル(Violin plot)

特徴的な遺伝子の発現量をバイオリンプロットで図示しました。縦軸は遺伝子発現量、横軸は細胞クラスタ、バイオリン型の幅は密度分布(プロットされた細胞数に相当)を示しています。図中にプロットされた各点は個々の細胞を表しており、各クラスタの細胞ごとの遺伝子発現量を一覧できます。

解析例2   多発性硬化症患者脳脊髄液に特徴的な単核細胞と遺伝子発現変化の検出

脳脊髄液中の単核細胞(リンパ球、単球などを含む血球細胞)は、中枢神経系の炎症や変性と関連があると考えられています。健常者群および多発性硬化症(multiple sclerosis : MS)患者群脳脊髄液中の細胞のSingle-cell RNA sequencingにより取得したデータの2群間比較解析により、各単核細胞の細胞割合と遺伝子発現における変化(統計的有意差)の検出を行いました。

クラスタリング結果(UMAP, 19,058 cells, n = 5)

クラスタリング結果(UMAP, 19,058 cells, n = 5)

バッチエフェクト(実験間誤差)処理後に発現プロファイルを統合し、クラスタリング結果をUMAPにより二次元上にプロットしました。健常者群(n=5, 10,386 cells)および多発性硬化症群(n=5, 8,672 cells)由来の細胞を群ごとに分けて表示しました(上図:健常者、下図:多発性硬化症患者)。細胞種名に続く( )内の数字はクラスタ番号を示します。

各クラスタに特徴的な遺伝子発現(Dotplot)

各クラスタに特徴的な遺伝子発現(Dotplot)

各クラスタに特徴的な遺伝子をドットプロットを用いて可視化しました。縦軸は各クラスタ、横軸は遺伝子に対応しています。発現量をドットの青色の濃度、発現している細胞の割合をドットの大きさで示しました。

CD4+ memory細胞サブクラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

CD4+ memory細胞サブクラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

CD4+ memory細胞は5つのサブクラスタ(0, 3, 6, 13, 21)に分類されました。 各クラスタに特徴的な遺伝子発現をヒートマップを用いて可視化しました。縦軸は遺伝子に、横軸は各クラスタに対応しています。発現量が多い遺伝子は赤色、少ないものは青色で示しました。

検体毎の各クラスタの構成細胞数(抜粋)

検体毎の各クラスタの構成細胞数(抜粋)

各クラスタに含まれる細胞数を検体毎に算出した結果を表に示しました。

各クラスタの構成細胞割合の比較(抜粋)

各クラスタの構成細胞割合の比較(抜粋)

各クラスタに含まれる細胞の割合を検体毎に算出し、健常者群(cont)および多発性硬化症群(MS)に分けてグラフに示しました。縦軸は細胞の割合、横軸は各クラスタを示しています。検体毎の割合を白抜きの円で表示し、各群の平均値(±SEM)を棒グラフで示しました。群間で有意差検定(Mann–Whitney U test)を実施した結果を、*p<0.05, **p<0.01で示しました。

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現分布

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現分布

多発性硬化症により発現変動した遺伝子をクラスタ毎に抽出し、その発現分布を二次元上にプロットしました。上段のCD8+ effector 1細胞で発現増加したPerforin-1(PRF1)や、下段のCD4+ memory細胞で発現減少したEarly growth response protein 1(EGR1)を例として示しました。

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現レベル(Violin plot)

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現レベル(Violin plot)

各クラスタにおける遺伝子発現量の変化をバイオリンプロットで図示しました。上段に赤枠で示したCD8+ effector 1(クラスタ2)に特徴的なPRF1 の発現増加や、下段に赤枠で示したCD4+ memory(クラスタ0, 3, 6, 13, 21)に特徴的なEGR1の発現減少が示されました。

解析例3   遺伝子ノックアウトにより異常を生じる少数細胞の発現変動遺伝子抽出

遺伝子Xのノックアウトによって異常が見られる部位になる領域を、野生型(WT)およびノックアウト(KO)マウス胚より取り出しSingle-cell RNA sequenceを行ったデータを解析しました。細胞亜集団の検出、細胞種推定、WTとKOにおける発現変動遺伝子(DEG)の抽出を行いました。

クラスタリング結果(t-SNE、4,088 cells)

クラスタリング結果(t-SNE、4,088 cells)

各種遺伝子発現量等のバイアス補正後、実験間誤差(Batch effect)を排除しながら発現プロファイルの次元削減を行い、クラスタリング結果をt-SNE*5により可視化しました。左図はWT、KO毎に、右図はクラスタ毎に図示しました。

各クラスタの細胞種推定結果

各クラスタの細胞種推定結果

発現変動遺伝子、細胞種マーカー遺伝子、GO解析等の機能解析結果より総合的に判断し、各クラスタの細胞種を推定し図示しました。Cell type AがKOマウスの表現型の異常に関与すると推定された細胞種です。

野生型とノックアウトにおける発現変動遺伝子の発現分布の一例

野生型とノックアウトにおける発現変動遺伝子の発現分布の一例

WTとKOにおいて、発現変動した遺伝子の一部を図示しました。ほとんどの細胞種で大きな変化は見られませんが、Cell type Aでは、複数の遺伝子に顕著な発現変動が確認できました。これらの発現変動遺伝子の一部はKOマウスの表現型に深く関わっている可能性が考えられます。この様にSingle-cell RNA-seq解析では、細胞集団のわずか数%の細胞でしか起こっていない変化を鋭敏に検出することが可能です。

解析例4   がん組織浸潤T細胞に特徴的なサブタイプの同定

末梢血、正常組織、肝腫瘍組織より採取したT細胞から、 FACSにより分取したCD3+/CD8+ T細胞と、CD3+/CD4+ T細胞のscRNA-seqデータを使用して4,721細胞のクラスタリングを行いました。

CD8+ T細胞のクラスタリング結果 (t-SNE、1,668 / 4,721 cells)

CD8+ T細胞のクラスタリング結果 (t-SNE、1,668 / 4,721 cells)

PCA(主成分分析)により発現プロファイルの次元削減を行い、クラスタリング結果をt-SNEにより可視化しました。T細胞(total 4,721 cells)は11のクラスタに分類され、CD8+T細胞は5クラスタ(C3,C4,C5,C7,C10、total 1,668 cells)に分類されました。

遺伝子発現分布

CD8A GZMA

遺伝子発現分布

CD8A GZMA

CD8Aを発現する細胞障害性T細胞(C3,C4,C5,C7,C10)は大部分がGZMA (Granzyme A)を発現していました。

各クラスタに特徴的な遺伝子発現ヒートマップ(Heatmap)

各クラスタに特徴的な遺伝子発現ヒートマップ(Heatmap)

各クラスタに特徴的な遺伝子の発現をヒートマップで一覧表示しました。C5では、疲弊した(exhausted)T細胞に特徴的に発現するHAVCR2(TIM-3), TNFRSF9, PDCD1(PD-1)などが発現していました。この様にして、細胞集団の性質を知らずにクラスタリング(unsupervised clustering)した後で、その細胞の性質を解析出来ます。さらに、由来組織を色分け表示(図上部、末梢血:緑、正常組織:青、腫瘍組織:赤)すると、C5のほとんどは腫瘍組織由来でした。

細胞の特徴のスコアリング表示 (Signature Scoring)

細胞の特徴のスコアリング表示 (Signature Scoring)

疲弊したT細胞に特徴的な遺伝子群(Zheng et al.)の発現量と、ランダムに選択した遺伝子群の発現量の差分をスコアリングして可視化しました。スコアが高い(赤色で表示)細胞ほど、疲弊したT細胞の特徴を有していると考えられます。C5が最も高いスコアを示しました。

由来組織ごとのCD8+ T細胞構成比

由来組織ごとのCD8+ T細胞構成比

由来組織ごとに各クラスタの構成比率を見ると、C5は末梢血(PB)や正常組織(Normal)にはほとんど見られず、腫瘍組織(Tumor)浸潤T細胞に多く含まれていました。この様に、細胞の分類基準や組成が分かっていない状態で細胞を分類し、解析対象(病態モデルやノックアウトなど)に特徴的なクラスタを見出すことが出来ます。

CD4+ T細胞のクラスタリング結果 (t-SNE、3,053 / 4,721 cells)

CD4+ T細胞のクラスタリング結果 (t-SNE、3,053 / 4,721 cells)

11クラスタに分類されたT細胞 (total 4,721 cells)のうち、CD4+T細胞は6クラスタ(C0, C1, C2, C6, C8, C9、total 3,053 cells)に分類されました。

遺伝子発現分布

CD4 FOXP3

遺伝子発現分布

CD4 FOXP3

CD4を発現するT細胞(C0,C1,C2,C6,C8,C9)のうち、C2には制御性T細胞(Treg)で特徴的に発現するFOXP3の発現が見られました。

Volcano plotによるC2の発現変動遺伝子の可視化

Volcano plotによるC2の発現変動遺伝子の可視化

FOXP3を発現しているC2とそれ以外のCD4+T細胞の遺伝子発現を比較し、発現変動比と統計的有意差をボルカノプロットで図示しました。C2は制御性T細胞に特徴的なFOXP3, TNFRSF18, TNFRSF9などの発現量が有意に高い(グラフ右上)ことが示されました。

由来組織ごとのCD4+ T細胞構成比

由来組織ごとのCD4+ T細胞構成比

由来組織ごとにCD4+ T細胞の構成比率を見ると、末梢血由来に多いC1とC8は組織中には少なく、また、腫瘍組織由来では正常組織由来と比べて、免疫応答を抑制する制御性T細胞(Treg, C2)の割合が顕著に増加していました。

解析例5   マウスES細胞の擬時間(pseudotime)解析

ES細胞(胚性幹細胞)にレチノイン酸を添加して分化を誘導し、経時的に細胞を回収してシングルセルRNA-seqを行ったデータを使用し、ES細胞分化の経時的変化を解析しました。

分化状態の異なる細胞集団のクラスタリング結果

分化状態の異なる細胞集団のクラスタリング結果

分化誘導前および誘導後6, 12, 24, 36, 48, 60, 72, 96時間後に採取したマウスES細胞をクラスタリングし、t-SNEにより二次元表示しました。多様な分化状態の細胞からなる細胞集団をC1-C7の7クラスタに分類出来ました。

擬時間の推定

擬時間の推定

主成分分析(PCA)による次元削減後の発現プロファイルの類似度に基づいて推定された擬似的な時間(pseudotime)の軸に沿って細胞を配置し、クラスタ毎に色分け表示しました。

各クラスタの擬時間上での分布

各クラスタの擬時間上での分布

推定した擬時間軸に沿って配置した細胞を、クラスタ毎に表示しました。各クラスタは擬時間軸に沿って連続的に分布していました。

擬時間と実時間経過(試料採取時間)の対比

擬時間と実時間経過(試料採取時間)の対比

推定した擬時間軸に沿って配置した細胞を、分化誘導後の採取時間ごとに表示しました。擬時間の経過(擬時間軸上での位置変化)と、実時間経過(試料採取時間)はよく対応していました。多様な分化状態を含む細胞集団の発現プロファイルを取得して、この様な解析手法を用いることにより細胞の分化過程を推定できると考えられます。

解析例6   抗原提示細胞の分化経路推定(single cell trajectory analysis)

ヒト単球(Monocyte)を適切な培養条件で分化誘導すると、CD1+樹状細胞(Dendritic cell)やCD16+マクロファージ(Macrophage)に分化することが知られています(Krutzik et al.)。
がん患者腹水から樹状細胞としてCD1c+/CD16-細胞、マクロファージとしてCD1c-/CD16+細胞、末梢血中より単球としてCD14+細胞をFACSにより分取し、Single cell RNA-seqを行ったデータを使用して解析を行いました。

単球、樹状細胞およびマクロファージのクラスタリング結果(t-SNE, 4,002 cells)

単球、樹状細胞およびマクロファージのクラスタリング結果(t-SNE, 4,002 cells)

PCAによる次元削減後に細胞のクラスタリングを行い、t-SNEにより二次元上に可視化しました。右図はクラスタごと、左図はFACS分取した由来細胞種ごとに色分け表示しました。腹水より採取された樹状細胞およびマクロファージは単球由来であることが示されており、これらの細胞の発現プロファイルを用いて分化経路推定を行いました。

 1: mo-derived dendritic cell 1  2: macrophage 1
 3: macrophage 2  4: monocyte
 5: mo-derived dendritic cell 2  6: end-stage mo-derived dendritic cell

PCAによる次元削減後に細胞のクラスタリングを行い、t-SNEにより二次元上に可視化しました。右図はクラスタごと、左図はFACS分取した由来細胞種ごとに色分け表示しました。腹水より採取された樹状細胞およびマクロファージは単球由来であることが示されており、これらの細胞の発現プロファイルを用いて分化経路推定を行いました。

 1:  mo-derived dendritic cell 1
 2:  macrophage 1
 3:  macrophage 2
 4:  monocyte
 5:  mo-derived dendritic cell 2
 6:  end-stage mo-derived dendritic cell  

分化経路推定

cluster pseudotime

分化経路推定

cluster pseudotime

各クラスタに特徴的な遺伝子の発現プロファイルをもとに、分化経路を擬時間に沿って再構成し(pseudo temporal ordering)、二次元に可視化しました。左図はクラスタごと、右図は擬時間に従って細胞を色分け表示しました。

時系列解析1 (擬時間経過による遺伝子発現変化)

macrophage monocyte dendritic cell

時系列解析1 (擬時間経過による遺伝子発現変化)

macrophage monocyte dendritic cell

擬時間変化に伴って発現量が変動した遺伝子を網羅的に抽出し、各遺伝子の発現量をヒートマップ表示しました。ヒートマップ中央を分化(および擬時間)の始点(monocyte)として、左側がmacrophage、右側がdendritic cellに分化する方向に擬時間経過を表示しました。

時系列解析2 (擬時間経過による各遺伝子発現変化)

Monocyte / Macrophage markers Dendritic cell markers

時系列解析2 (擬時間経過による各遺伝子発現変化)

Monocyte / Macrophage markers Dendritic cell markers

時系列解析1の遺伝子から、既知のdendritic cellおよびmonocyte / macrophageマーカー遺伝子を抽出し、擬時間経過に伴う発現量変化をプロットしました。縦軸は発現量、横軸は擬時間経過、着色された各点は個々の細胞を示しています。擬時間は、始点を0、それぞれの経路の終点を100として表示しました。実線がdendritic cell側、点線がmacrophage側に分岐した細胞での発現量変化を示しています。

時系列解析3 (擬時間経過による遺伝子発現変化)

Monocyte / Macrophage marker Dendritic cell marker

時系列解析3 (擬時間経過による遺伝子発現変化)

Monocyte / Macrophage marker Dendritic cell marker

分化経路推定を行った二次元プロット上に、dendritic cellおよびmonocyte / macrophageマーカー遺伝子の発現量変化をプロットしました。各マーカー遺伝子の擬時間経過に伴う発現増加が確認できます。

解析例7   RNA velocity解析による細胞動態の推定

げっ歯類の切歯は生涯伸び続けることが知られています。これはげっ歯類の切歯の根元に存在する幹細胞が、歯のエナメル質を形成するエナメル芽細胞を継続的に供給していることによります。RNA代謝から細胞動態を推定する手法であるRNA velocity解析により、切歯基部の細胞動態を解析しました。

クラスタリング結果 (UMAP、 3,296 cells)

クラスタリング結果 (UMAP、 3,296 cells)

エナメル芽細胞と前駆細胞を含むマウス切歯基部の上皮細胞をクラスタリングしました。PCAにより発現プロファイルの次元削減を行い、クラスタリング結果をUMAPにより二次元上に可視化しました。
3次元プロットはこちらからご覧頂けます。※プロットはドラックして回転、マウスのホイールで拡大、縮小が可能です。読み込みに時間が掛かる場合があります。

各クラスタに特徴的な遺伝子発現分布

各クラスタに特徴的な遺伝子発現分布

切歯基部の前駆細胞はゆっくりと細胞周期が進行していること、エナメル芽細胞は切歯の近位から遠位に向けて分化が進むことが知られています。S期およびG2/M期に特徴的な遺伝子と、エナメル芽細胞に特徴的な遺伝子の発現分布を示しました。

RNA velocityを用いた細胞動態の可視化

RNA velocityを用いた細胞動態の可視化

RNA velocity解析により細胞動態を解析しました。矢印は状態変化の方向と大きさを示します。前駆細胞の細胞周期進行と、エナメル芽細胞の分化に伴う状態変化が特徴的に検出されました。

解析例8   エナメル芽細胞分化に伴って発現が変化する遺伝子群の抽出

解析例7でRNA velocity解析により細胞状態が変化する方向が明らかになりました。さらに擬時間(pseudotime)解析により、状態変化に伴って発現が変化する遺伝子群を網羅的に抽出しました。

3次元プロット上での分化経路推定(trajectory analysis)結果

3次元プロット上での分化経路推定(trajectory analysis)結果

マウス切歯基部由来の上皮細胞をクラスタリングし、経路推定(軌道解析)を行いました。推定された経路を実線(黒)で表示しました。
3次元プロットはこちらからご覧頂けます。※プロットはドラックして回転、マウスのホイールで拡大、縮小が可能です。読み込みに時間が掛かる場合があります。

解析対象経路と擬時間表示

cluster pseudotime

解析対象経路と擬時間表示

cluster pseudotime

クラスタ4はエナメル芽細胞の前駆細胞、クラスタ22の先端部が分化が進んだエナメル芽細胞と推定されました。クラスタ4から22に至る、4、9、22の分化経路を解析対象としました。クラスタ4を始点として擬時間を色分け表示しました(右図)。

解析対象クラスタに特徴的な遺伝子群の抽出

解析対象クラスタに特徴的な遺伝子群の抽出

各クラスタに特徴的な遺伝子の発現量をヒートマップで可視化しました。各遺伝子は、発現プロファイルの類似度により、モジュール(遺伝子群)化しました。縦軸は遺伝子群、横軸はクラスタに対応しています。分化経路のクラスタ(4、9、22)を赤枠、最終分化したエナメル芽細胞で発現が増加するモジュールを青枠で示しました。

分化経路に沿って発現上昇した遺伝子の抽出(時系列解析)

分化経路に沿って発現上昇した遺伝子の抽出(時系列解析)

分化の最終段階で発現が上昇した遺伝子モジュールには、分化したエナメル芽細胞で発現することが知られているAmelogenin (Amelx)、Enamelin (Enam)などが含まれていました。グラフの各点は細胞を示しており、解析対象クラスタに含まれる細胞のみを表しています。

分化経路に沿って発現上昇した遺伝子の発現分布と変化

分化経路に沿って発現上昇した遺伝子の発現分布と変化

エナメル芽細胞のマーカーであるAmelogenin と、今回の解析で抽出したClusterin (Clu)遺伝子の発現を二次元プロット上で可視化しました。

解析フロー


細胞懸濁液 シングルセル化

ライブラリ調製

シーケンシング
シーケンスデータ 発現量推定・正規化

クラスタリング

発現変動遺伝子抽出

細胞種推定
解析結果

① 細胞懸濁液から解析 
② シーケンスデータから解析 

解析フロー

解析条件

  • 解析対象細胞数(目安):  数百細胞~2万細胞
  • 細胞当たりのリード数 :  研究目的に最適な条件をご提案します。
  • 解析システム     :  ご要望に合わせてご提案します。
  • データ解析      :  研究目的に最適な手法で実施します(Batch effect等の各種補正対応)

受入物

① 細胞懸濁液から解析 ② シーケンスデータから解析
受入物 細胞懸濁液 シーケンスデータ(FASTQファイル)
受入条件
【生細胞の場合】
  • 解析希望細胞数の10倍以上(目安)
  • 細胞生存率80%以上
【凍結細胞の場合】
  • 解析希望細胞数の20倍以上(目安)
  • 融解後の細胞生存率80%以上
  • 10x Genomics社 Chromiumシステム
  • BD社 Rhapsodyシステム
  • Takara Bio社 ICELL8システム*6
  • Fluidigm社 C1システム*7
  • セルソーター
  • マニュアルピペッティング
※上記のほか様々なシングルセル化、ライブラリ調製法で取得したシーケンスデータに対応
その他
【全般】
  • 凝集していない細胞をご準備下さい
  • 少数細胞(500細胞未満)の場合はご相談下さい
【生細胞の場合】
  • エリアにより訪問検体受取対応可
  • 出張解析対応可
【凍結細胞の場合】
  • 凍結融解の条件は事前にご確認下さい
  • 各条件の事前確認の為、テスト検体のご提供を推奨
  • 細胞保存液にはセルバンカー等をご使用下さい
以下の情報をお知らせください
  • 実験デザイン
  • 生物種
  • 検体数
  • 細胞数 / 検体
  • リード数 / 細胞
  • シングルセル化方法
  • ライブラリ調製キット名
  • シーケンサー機種

納品物

① 細胞懸濁液から解析
  • 解析報告書
  • シーケンスデータ
  • 細胞クラスタリング画像データ
  • 各クラスタの細胞数データ
  • 各種遺伝子の発現データ(発現量、発現分布)
  • 各種遺伝子リストなど
② シーケンスデータから解析
  • 解析報告書
  • 細胞クラスタリング画像データ
  • 各クラスタの細胞数データ
  • 各種遺伝子の発現データ(発現量、発現分布)
  • 各種遺伝子リストなど

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参考文献

Treutlein et al. “Dissecting direct reprogramming from fibroblast to neuron using single-cell RNA-seq” Nature vol.534, 391–395, 2016. doi: 10.1038/nature18323.

Zheng, C. et al. “Landscape of Infiltrating T Cells in Liver Cancer Revealed by Single-Cell Sequencing.” Cell 169, 1342-1356.e16 (2017). doi: 10.1016/j.cell.2017.05.035.

Semrau, S. et al. “Dynamics of lineage commitment revealed by single-cell transcriptomics of differentiating embryonic stem cells.” Nature Communications 8, (2017). doi: 10.1038/s41467-017-01076-4.

Krutzik, S. R. et al. “TLR activation triggers the rapid differentiation of monocytes into macrophages and dendritic cells.” Nature Medicine 11, 653–660 (2005). doi: 10.1038/nm1246.

Tang-Huau, T.-L. et al. “Human in vivo-generated monocyte-derived dendritic cells and macrophages cross-present antigens through a vacuolar pathway.” Nature Communications 9, (2018). doi: 10.1038/s41467-018-04985-0.

Sharir, A. et al. “A large pool of actively cycling progenitors orchestrates self-renewal and injury repair of an ectodermal appendage.” Nature Cell Biology 21, 1102–1112 (2019). doi: 10.1038/s41556-019-0378-2.

Schafflick, D. et al. Integrated single cell analysis of blood and cerebrospinal fluid leukocytes in multiple sclerosis. Nature Communications 11, (2020). DOI: 10.1038/s41467-019-14118-w

*1  別途ご相談ください。データにより解析できない場合があります。
*2  ChromiumシステムTMは、10X Genomics社の登録商標です。
*3  RhapsodyシステムTMは、BD社の登録商標です。
*4  Uniform Manifold Approximation and Projection
*5  t-distributed Stochastic Neighbor Embedding
*6  ICELL8システムは、Takara Bio社の登録商標です。
*7  C1システムは、Fluidigm社の登録商標です。