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当社ジエンブルのメンバーが綴る技術系ブログ
研究相談や解析業務で培った知見をもとに、研究に役立つテーマを技術者目線でわかりやすく発信します。

2026.06.19

シングルセルRNA-seqとは?

バルクRNA-seq解析について

バルクRNA-seq解析は、目的の組織や細胞集団からまとめてRNAを抽出し、そこに含まれる遺伝子発現情報を網羅的に取得する解析手法です。まず、抽出したRNAを逆転写してcDNAライブラリを作成した後、断片化してシーケンスライブラリを作成します。ライブラリ断片の配列を次世代シーケンサーで大量にシーケンスし、参照ゲノム配列またはトランスクリプトーム配列にマッピングされた断片を数えることで遺伝子発現量を推定します。網羅的な遺伝子発現情報から生物学的に解釈可能な情報を抽出する事を目的に行われる解析手法です。研究対象として興味ある生命現象があり、それに関わる分子が具体的に想定されていない場合に「まずは転写レベルで全体的に何が変化したかを見よう」というモチベーションで使用されることが多いです。

シングルセルRNA-seq(scRNA-seq)解析とは

scRNA-seq解析は、単にRNA-seqを単一細胞レベルで行うものであるのかと言うと、その本質は単純にそのように表現されるものではありません。現在主流となっているscRNA-seq解析手法の原理は、様々な細胞タイプが混在する細胞懸濁液を、微小流路を用いて異なるバーコード配列を持つビーズと一緒に一細胞ずつ液滴中に分離します。この液滴内で逆転写反応を行いcDNAライブラリを作成します。この時、細胞を識別するための細胞バーコード配列と、RNA分子を識別するためのUMIと呼ばれる分子バーコード配列が付加されます。バーコード配列により、ライブラリをまとめてシーケンスした後から、シーケンスした配列がどの細胞由来の、どのRNA分子由来の配列かを識別することが出来ます。このバーコーディング技術が、同時に数千から数百万細胞に及ぶ多数の細胞を同時に解析するハイスループットな解析を可能にしました。この手法の本質的に重要な点は、一度に多数の細胞のRNA発現プロファイルを取得し、取得したプロファイルに基づいて類似した細胞を分類出来る点にあります。この時、「取得したRNA発現プロファイルに基づいて」という部分が極めて重要で、これが何を意味するかと言えば、目的の細胞集団がどんな性質かをあらかじめ知らなくても分類できるという事です。ここが目的細胞と他の細胞を分類する条件をあらかじめ知っている必要があるFACSのような細胞ソーティング手法とは決定的に異なる点です。それのどこが重要なのかについて次にご説明します。

scRNA-seq解析だと何が分かるのか?

生体組織は多種多様な細胞タイプで構成されています。何らかの刺激により起こったRNA発現変化を解析するために組織を丸ごとRNA-seq解析した場合には、多様な細胞タイプの中でどの細胞タイプの遺伝子発現が変化したかは分かりません。どの細胞タイプで変化が起こるかを予測していたとしても、目的の細胞タイプがごく少数の場合には何らかの手段で目的の細胞タイプを選別し分取して解析する必要があります。ごく一部の細胞タイプで起こった変化は、その他多数の細胞の発現情報の中に埋没してしまうからです。その際、scRNA-seq解析は、取得した発現プロファイルに基づいて細胞を分類するため、どう分類すれば良いか?をあらかじめ知っている必要がありません。「組織中のどの細胞タイプで変化が起こるか分からない」「組織中のA細胞の一部が刺激に応答して活性化A細胞の集団が出現すると考えているが、表面抗原は変化しないのでFACSで分離して比較する事は出来ない」という状況でもscRNA-seq解析ではA細胞と活性化A細胞を分類して比較可能です。それどころか、実は一部の活性化A細胞以外に多数の中間型A細胞も出現していた、実は活性化A細胞によりB細胞が刺激を受けて活性化B細胞が出現していた、といった想定外の変化があったとしても、scRNA-seq解析では情報科学的手法によりそれらの細胞集団を事後的に分類し解析することが可能です。

まとめ

scRNA-seq解析の強みの一つは、多様な細胞集団の中で、どの細胞集団がどう変化するのかが分からない状況でも、一部の細胞集団で起こった変化を選択的に抽出して解析可能な点にあります。研究目的に対して最大限の寄与が得られるように、scRNA-seq解析をどのようにデザインするかが重要になります。

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