口蓋裂を生じるPax9欠損マウスにおける形態形成関連遺伝子の発現分布

Pax9の機能的欠損は口蓋棚(Palatal shelf)の閉鎖不全による口蓋裂を生じることが知られています。野生型およびPax9欠損型マウス胎児口蓋の組織切片から取得したスポット毎の空間トランスクリプトームデータ(Visium HDデータ*1)を用いて、形態形成に関連する遺伝子の発現分布を可視化しました。

胚口蓋におけるPax9遺伝子の発現分布(マウス12.5日胚)

胚口蓋におけるPax9遺伝子の発現分布(マウス12.5日胚)

上段のHE染色像では、下部中央に舌(Tongue)、舌に覆いかぶさるように口蓋棚(Palatal shelf)があります。下段では、Pax9の発現分布をスポット毎にヒートマップで表示しました。野生型マウス(WT、下段左)では、OPを中心に口蓋棚全体に強く発現が見られましたが、Pax9 KOマウス(KO、下段右)では発現が大きく減少していました。 OP: Oral Palatal domain(口蓋棚の外側の領域)、NP: Nasal Palatal domain(口蓋棚の舌側の領域)。

口蓋形成に関連するホメオボックス遺伝子の発現分布(マウス13.5日胚)

口蓋形成に関連するホメオボックス遺伝子の発現分布(マウス13.5日胚)

鼻骨の形成に関わるAlx1は、WT(上段左)ではNPで発現が見られましたが、KO(上段右)では発現が顕著に減少しました。顔面形成や歯の発生に関わるMsx1は、WT(下段左)ではOPで強く発現が見られましたが、KO(下段右)では若干の発現減少が見られました。 これらのhomeobox遺伝子の発現がPax9 KOにより影響を受けた可能性が考えられました。

ShhおよびShh受容体の発現分布(マウス13.5日胚)

ShhおよびShh受容体の発現分布(マウス13.5日胚)

体軸形成や顔面形成に関わるShhは、WT(上段左)ではOPの表層に発現が見られました。Shhの抑制型受容体であるPtch1は、WT(下段左)ではOPを中心に口蓋棚全体に発現が見られました。Pax9 KOにより、いずれも顕著に発現の減少が見られ(右列) 、Shhの発現およびシグナルの制御に異常が生じていると考えられました。

Wntシグナルの制御因子の発現分布(マウス13.5日胚)

Wntシグナルの制御因子の発現分布(マウス13.5日胚)

形態形成時の細胞増殖・分化を制御するWntシグナルに関連する遺伝子の発現分布を可視化しました。Wntシグナルを抑制するSfrp2は、WT (上段左)ではNPを中心に口蓋棚全体で発現が見られました。Wntシグナルを増強するLgr5は、WT(下段左)では主にOP表層で発現が見られました。Pax9 KOにより、いずれも発現の減少が見られ(右列) 、Wntシグナルの制御にも異常が生じていると考えられました。