心臓の細胞老化による細胞間相互作用の変化の検出
老化した細胞は特徴的な発現プロファイル(SASP*)を示します。マウス心臓に由来する細胞のシングルセル遺伝子発現データを用いて、SASP遺伝子群を発現する細胞を含む細胞間相互作用解析により、老化による細胞間相互作用の変化を検出しました。*: Senescence-Associated Secretory Phenotype.
若年および老齢マウス心臓由来細胞のクラスタリング結果
若年および老齢マウス心臓由来細胞のクラスタリング結果
若年マウス(3 month, n=2)および老齢マウス(24 month, n=2)の心臓に由来する細胞(主に非筋細胞)をクラスタリングし、二次元上にプロットしました。老化による若干の細胞構成比の変化が見られましたが、老化に特徴的な細胞集団の消失や出現は見られませんでした。FB: fibroblast, V-EC: vascular endothelial cell, L-EC: lymphatic endothelial cell, SM: smooth muscle cell, MAC: macrophage, NP: neutrophil, NK: natural killer cell, C-MYO: cardiac myocyte.
老化によるSASP遺伝子群の発現変化 (Signature scoring)
老化によるSASP遺伝子群の発現変化 (Signature scoring)
老化に特徴的な遺伝子群(SASP genes)の発現をスコアリングし、若年マウス(3m)と老齢マウス(24m)の全細胞を対象に細胞ごとのスコアをヒストグラムで比較しました。その結果、老齢マウスでスコアが高い細胞が顕著に増加していました。また、各クラスタについて群ごとのスコアをviolin plotで表示すると、老齢マウスで線維芽細胞(青枠)、マクロファージおよび好中球(赤枠)などが高いスコアを示し、老化によるスコアの増加が見られました。
老化により細胞間相互作用に変化が見られた細胞タイプ
老化により細胞間相互作用に変化が見られた細胞タイプ
老化による細胞間相互作用数の変化をヒートマップで表示しました。縦軸はシグナルの発信細胞、横軸は標的細胞を表しており、相互作用数が増加した組み合わせを赤色、減少した組み合わせを青色で表示しました。線維芽細胞が発信および標的細胞となっている相互作用数(青枠)、線維芽細胞が発信細胞、免疫系細胞が標的細胞となっている相互作用数(緑枠)、免疫系細胞が発信および標的細胞となっている相互作用数(赤枠)が大きく変化していました。
老化による線維芽細胞およびマクロファージが発信する細胞間相互作用の変化
老化による線維芽細胞およびマクロファージが発信する細胞間相互作用の変化
老化による細胞間シグナル伝達経路(パスウェイ)の活性変化を検出しました。縦軸に各パスウェイ、横軸に各パスウェイの活性レベルをとり、若年マウスを赤色、老齢マウスを緑色の棒グラフで示しました。線維芽細胞(FB_1, 2, 3, 4, 5, 6, 7)を発信細胞とするパスウェイではFGF、VCAM、ICAMのシグナル伝達経路(左図、青枠)の活性が、マクロファージ(MAC_1, 2, 3)を発信細胞とするパスウェイではSASPの代表的因子であるTNFシグナル伝達経路(右図、赤枠)の活性が老化により上昇していました。
老化によりTNFシグナル伝達経路が活性化した細胞タイプ
老化によりTNFシグナル伝達経路が活性化した細胞タイプ
TNFシグナル伝達経路の活性レベルをヒートマップで示しました。縦軸は発信細胞、横軸は標的細胞を表します。マクロファージ(MAC_2, 3)および好中球(NP)を発信細胞とするTNFシグナル伝達経路が老化により活性化していました(右図)。標的細胞側には顕著な変化は見られませんでした。老化により、一部のマクロファージおよび好中球の性質が変化し、TNFシグナル伝達経路が活性化した可能性が考えられました。
老化によるTNFおよびTNF受容体の発現レベルの変化
老化によるTNFおよびTNF受容体の発現レベルの変化
各クラスタのTNFおよびTNF受容体(Tnfrsf1a, Tnfrsf1b)発現量を群別にバイオリンプロットで表示しました。老齢マウスのマクロファージ(MAC_2, MAC_3)および好中球(NP)でTNFの発現量が顕著に増加していました(上段、赤枠)。TNF受容体は老化による発現量の大きな変化は見られませんでした(中段、下段)。老化によるTNFシグナル伝達経路の活性化は、主にリガンドであるTNFの発現量増加に起因すると考えられました。
