がん組織浸潤T細胞に特徴的なサブタイプの同定
末梢血、正常組織、肝腫瘍組織より採取したT細胞から、 FACSにより分取したCD3+/CD8+ T細胞と、CD3+/CD4+ T細胞のscRNA-seqデータを使用して4,721細胞のクラスタリングを行いました。
CD8+ T細胞のクラスタリング結果(1,668/4,721 cells, 5群、n=1, t-SNE)
CD8+ T細胞のクラスタリング結果(1,668/4,721 cells, 5群、n=1, t-SNE)
PCA(主成分分析)により発現プロファイルの次元削減を行い、クラスタリング結果をt-SNEにより可視化しました。T細胞(total 4,721 cells)は11のクラスタに分類され、CD8+T細胞は5クラスタ(C3,C4,C5,C7,C10、total 1,668 cells)に分類されました。
遺伝子発現分布
CD8A GZMA遺伝子発現分布
CD8A GZMA
CD8Aを発現する細胞障害性T細胞(C3,C4,C5,C7,C10)は大部分がGZMA (Granzyme A)を発現していました。
各クラスタに特徴的な遺伝子発現ヒートマップ(Heatmap)
各クラスタに特徴的な遺伝子発現ヒートマップ(Heatmap)
各クラスタに特徴的な遺伝子の発現をヒートマップで一覧表示しました。C5では、疲弊した(exhausted)T細胞に特徴的に発現するHAVCR2(TIM-3), TNFRSF9, PDCD1(PD-1)などが発現していました。この様にして、細胞集団の性質を知らずにクラスタリング(unsupervised clustering)した後で、その細胞の性質を解析出来ます。さらに、由来組織を色分け表示(図上部、末梢血:緑、正常組織:青、腫瘍組織:赤)すると、C5のほとんどは腫瘍組織由来でした。
細胞の特徴のスコアリング表示(Signature Scoring)
細胞の特徴のスコアリング表示(Signature Scoring)
疲弊したT細胞に特徴的な遺伝子群(Zheng et al.)の発現量と、ランダムに選択した遺伝子群の発現量の差分をスコアリングして可視化しました。スコアが高い(赤色で表示)細胞ほど、疲弊したT細胞の特徴を有していると考えられます。C5が最も高いスコアを示しました。
由来組織ごとのCD8+ T細胞構成比
由来組織ごとのCD8+ T細胞構成比
由来組織ごとに各クラスタの構成比率を見ると、C5は末梢血(PB)や正常組織(Normal)にはほとんど見られず、腫瘍組織(Tumor)浸潤T細胞に多く含まれていました。この様に、細胞の分類基準や組成が分かっていない状態で細胞を分類し、解析対象(病態モデルやノックアウトなど)に特徴的なクラスタを見出すことが出来ます。
CD4+ T細胞のクラスタリング結果(3,053/4,721 cells, 5群、n=1, t-SNE)
CD4+ T細胞のクラスタリング結果(3,053/4,721 cells, 5群、n=1, t-SNE)
11クラスタに分類されたT細胞 (total 4,721 cells)のうち、CD4+T細胞は6クラスタ(C0, C1, C2, C6, C8, C9、total 3,053 cells)に分類されました。
遺伝子発現分布
CD4 FOXP3遺伝子発現分布
CD4 FOXP3
CD4を発現するT細胞(C0,C1,C2,C6,C8,C9)のうち、C2には制御性T細胞(Treg)で特徴的に発現するFOXP3の発現が見られました。
Volcano plotによるC2の発現変動遺伝子の可視化
Volcano plotによるC2の発現変動遺伝子の可視化
FOXP3を発現しているC2とそれ以外のCD4+T細胞の遺伝子発現を比較し、発現変動比と有意確率をVolcano plotで図示しました。C2は制御性T細胞に特徴的なFOXP3, TNFRSF18, TNFRSF9などの発現量が有意に高い(グラフ右上)ことが示されました。
由来組織ごとのCD4+ T細胞構成比
由来組織ごとのCD4+ T細胞構成比
由来組織ごとにCD4+ T細胞の構成比率を見ると、末梢血由来に多いC1とC8は組織中には少なく、また、腫瘍組織由来では正常組織由来と比べて、免疫応答を抑制する制御性T細胞(Treg, C2)の割合が顕著に増加していました。
