多発性硬化症患者脳脊髄液に特徴的な単核細胞と遺伝子発現変化の検出

脳脊髄液中の単核細胞(リンパ球、単球などを含む血球細胞)は、中枢神経系の炎症や変性と関連があると考えられています。健常者群および多発性硬化症(multiple sclerosis : MS)患者群脳脊髄液中の細胞のscRNA-seqにより取得したデータの2群間比較解析により、各単核細胞の細胞割合と遺伝子発現における変化(統計的有意差)の検出を行いました。

細胞のクラスタリング結果(19,058 cells, 2群、n=5, UMAP)

細胞のクラスタリング結果(19,058 cells, 2群、n=5, UMAP)

Batch effect(実験間誤差)補正後に発現プロファイルを統合し、クラスタリング結果をUMAPにより二次元上にプロットしました。健常者群(n=5, 10,386 cells)および多発性硬化症群(n=5, 8,672 cells)由来の細胞を群ごとに分けて表示しました(上図:健常者、下図:多発性硬化症患者)。細胞タイプ名に続く( )内の数字はクラスタ番号を示します。

各クラスタに特徴的な遺伝子発現(Dot plot)

各クラスタに特徴的な遺伝子発現(Dot plot)

各クラスタに特徴的な遺伝子をドットプロットを用いて可視化しました。縦軸は各クラスタ、横軸は遺伝子に対応しています。発現量をドットの色の濃淡で、発現している細胞の割合をドットの大きさで示しました。

CD4+ memory細胞サブクラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

CD4+ memory細胞サブクラスタの発現変動遺伝子(Heatmap)

CD4+ memory細胞は5つのサブクラスタ(0, 3, 6, 13, 21)に分類されました。 各クラスタに特徴的な遺伝子発現をヒートマップを用いて可視化しました。縦軸は遺伝子に、横軸は各クラスタに対応しています。発現量が多い遺伝子は赤色、少ないものは青色で示しました。

検体毎の各クラスタの構成細胞数(抜粋)

検体毎の各クラスタの構成細胞数(抜粋)

各クラスタに含まれる細胞数を検体毎に算出した結果を表に示しました。

各クラスタの構成細胞割合の比較(抜粋)

各クラスタの構成細胞割合の比較(抜粋)

各クラスタに含まれる細胞の割合を検体毎に算出し、健常者群(cont)および多発性硬化症群(MS)に分けてグラフに示しました。縦軸は細胞の割合、横軸は各クラスタを示しています。検体毎の割合を白抜きの円で表示し、各群の平均値(±SEM)を棒グラフで示しました。群間で有意差検定を実施した結果を、*p<0.05, **p<0.01で示しました。

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現分布

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現分布

多発性硬化症により発現変動した遺伝子をクラスタ毎に抽出し、その発現分布を二次元上にプロットしました。上段のCD8+ effector 1細胞で発現増加したPerforin-1(PRF1)や、下段のCD4+ memory細胞で発現減少したEarly growth response protein 1(EGR1)を例として示しました。

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現レベル(Violin plot)

多発性硬化症により発現変動する遺伝子の発現レベル(Violin plot)

各クラスタにおける遺伝子発現量の変化をバイオリンプロットで図示しました。上段に赤枠で示したCD8+ effector 1(クラスタ2)に特徴的なPRF1 の発現増加や、下段に赤枠で示したCD4+ memory(クラスタ0, 3, 6, 13, 21)に特徴的なEGR1の発現減少が示されました。