2022.06.28

理研の技術を実用化、RamDA-seqデータ解析サービスを正式開始

〜 従来検出が難しかった1細胞ごとに発現変化する多種多様なRNA*1情報のデータ解析サービスを提供 〜

ゲノム解析サービスを提供する株式会社ジエンブル(本社:福岡県福岡市、代表取締役:竹添裕高)は、理化学研究所(埼玉県和光市 理事長:五神 真、以下理研) 生命機能科学研究センター バイオインフォマティクス研究開発チームら共同研究チームが開発した「1細胞完全長トータルRNAシーケンス法(RamDA-seqTM)」*2及び1次解析ワークフロー「RamDAQ」*3を基に、これまで検出が難しかった1細胞レベルでの多種多様なRNAの発現解析を可能とする「シングルセル完全長total RNAシーケンスデータ解析サービス」を2022年7月4日(月)より正式に提供を開始致します。

2019年6月にがんゲノム医療が一部保険適用となり、がん組織の多数の遺伝子を調べて、患者の体質や病状に合わせた治療が行われています。最近の研究では、がん組織等では個々の細胞で性質が異なることが明らかとなり、治療に向けて1細胞ごとの全遺伝子解析の有効性が示されてきました。また近年、iPS細胞等による再生医療に関する研究や治験が国内外を問わず精力的に進められています。これまで有効な治療法がなかった疾患の治療が可能になるなど社会の期待は大きい一方、再生医療における移植細胞の安全性が求められています。移植細胞が適切な細胞タイプや状態であるかを確認するためには、個々の細胞に含まれるRNAの種類と量を網羅的に調べることが有効です。しかしながら、検体が微量であることや計測原理の問題により、従来法では検出できるRNAの種類が少なく、またRNA全長の一部が検出されないため、疾患の原因や安全性評価の指標となるRNAを網羅的に把握できないという課題がありました。

理研が2018年2月に開発した「RamDA-seqTM」及び2020年12月に開発した1次データ解析ワークフロー「RamDAQ」により、これまで検出が難しかった1細胞中の特殊なRNA(非polyA型RNA*4)を含む多種多様なRNAの量とその全長を偏りなく計測できるようになりました。

当社は、理研の技術指導を受けこの技術を実用化すると共に、長年培ってきたゲノムデータ解析(高次解析)技術を組み合わせることで、1細胞レベルで異なる多種多様なRNAの網羅的な発現解析を可能とする受託解析サービス「シングルセル完全長total RNAシーケンスデータ解析サービス」の提供を正式に開始致します。今後は、更にサンプル調製からの一連の受託解析サービスの提供と、医療現場での技術の実用化を目指します。

【 シングルセル完全長total RNAシーケンスデータ解析サービス概要 】
■特徴

(1)
従来法では計測できない1細胞中の特殊なRNA(非polyA型RNA)を含む多種多様なRNAの発現解析が可能
(2)
1細胞レベルで遺伝子全長に渡って偏りのない発現解析が可能
(3)
従来法に比べて、特殊なRNAを含む約2倍の遺伝子種の発現解析が可能

■解析例

ヒトiPS細胞由来神経幹細胞塊中の細胞タイプ推定結果
遺伝子発現分布

■販売開始日2022年7月4日(月)

※受託解析サービスに関する詳細情報は、こちらよりご覧頂けます。

【 用語説明 】

*1
RNA
ゲノム(細胞が持つ全遺伝情報)中の個々の遺伝情報がコードされた領域が遺伝子です。遺伝子の情報は、RNAとして読み出されます。
*2
1細胞完全長トータルRNAシーケンス法(RamDA-seqTM)
多様なRNAの発現量と全長を1細胞ごとに計測する方法(RNAシーケンス法)。タンパク質をコードするmRNAに加え、ヒストンmRNA、長鎖ノンコーディングRNA、mRNA前駆体、環状RNA、エンハンサーRNAなども検出できます。(Hayashi T. et al. Nature Communications, 2018)(理研によるプレスリリースはこちら)
*3
RamDAQ
理研と筑波大学 医学医療系 バイオインフォマティクス研究室が共同開発した、RamDA-seqTM用の情報解析ツール (1次データ解析ワークフロー)。
*4
非polyA型RNA
RNAは、3’末端にpolyA配列を持つpolyA型RNAと、持たない非polyA型RNAに分けられます。非polyA型RNAは、これまでその多くは機能が分かっていなかったRNA種ですが、近年、疾患や細胞分化、遺伝子発現の制御といった重要な生命現象に関与することが明らかとなり応用が期待されています。

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