iPS細胞由来神経幹細胞分化に伴い変動するcoding及びnon-coding RNA検出
ヒトiPS細胞をembryoid bodyに分化させた細胞を浮遊培養し、形成されたニューロスフィアのRamDA-seqデータ(網羅的なRNA発現プロファイル)を用いて、神経幹細胞の分化に伴い特徴的に発現量が変化するcoding RNAおよびnon-coding RNAの検出を行いました。
ヒトiPS細胞由来Neurosphereのクラスタリング結果(664 cells, 1群、UMAP)
ヒトiPS細胞由来Neurosphereのクラスタリング結果(664 cells, 1群、UMAP)
RamDA-seqにより取得された1細胞ごとのcoding RNAおよびnon-coding RNAの両方のRNA種の発現プロファイルに基づいて、細胞集団をクラスタリングしました。増殖中(aNSC)および休止期(qNSC)の神経幹細胞、神経芽細胞(neuroblast)、分化が進行した神経芽細胞(differentiating neuroblast)など複数の細胞タイプに分類されました。
各クラスタに特徴的な遺伝子発現
各クラスタに特徴的な遺伝子発現
各クラスタに特徴的に発現する遺伝子をヒートマップで一覧表示しました。発現量が多い遺伝子は赤色、少ないものは青色で示しました。
遺伝子発現分布
遺伝子発現分布
特定のクラスタで特徴的に発現している遺伝子の発現分布を図示しました。 coding RNA、non-coding RNAいずれも特定のクラスタで発現している遺伝子が見られました。MIR217HG : lncRNA(non-polyA RNA)、LINC02024 : lncRNA(lincRNA)
各クラスタにおける遺伝子発現レベル
各クラスタにおける遺伝子発現レベル
特定のクラスタで特徴的に発現している遺伝子の発現量をバイオリンプロットで図示しました。
細胞ごとのマッピング状態の可視化
細胞ごとのマッピング状態の可視化
neuroblastで発現が上昇していたJAG1(coding RNA)の細胞ごとのマッピング状態をMillefy*4により可視化しました。neuroblastの一部の細胞(赤枠)ではイントロンを含むJAG1遺伝子全長に渡ってリードがマップされていました。スプライシング 完了前のpre-mRNAが検出されたと考えられます。縦軸は個々の細胞、横軸はゲノム上の位置を示します。
neuroblastで発現上昇していたMIR217HG(lncRNA, non-polyA RNA)のマッピング状態を可視化しました。発現が見られた細胞の多く(上段赤枠内)で、イントロンを含む遺伝子全長に渡ってリードがマップされていました。クラスタ毎の平均値(下段赤枠)からも、遺伝子の領域によらず全長に渡ってリードが取得されたことが示されました。
分化経路推定(trajectory analysis)
分化経路推定(trajectory analysis)
未分化のneural stem cellからneuroblastへの分化経路を推定し、細胞を擬時間で色分け表示しました。矢印は擬時間経過の方向を示しています。
分化経路に沿って特徴的に変化した遺伝子の抽出
分化経路に沿って特徴的に変化した遺伝子の抽出
擬時間(pseudotime)に従って特徴的に変化した遺伝子を抽出し、その発現量をグラフ表示しました。縦軸は遺伝子の発現量、横軸は擬時間を表します。分化が進んだ細胞集団で発現上昇する遺伝子(上段)や、分化の過程で一過性に発現上昇する遺伝子(下段)がcoding RNA、non-coding RNAいずれにも見出されました。KRTAP5-AS1 : lncRNA(antisense RNA, non-polyA RNA)、AC010247.2 : lncRNA(antisense RNA, non-polyA RNA)
分化経路に沿って特徴的に変化した遺伝子の発現分布
分化経路に沿って特徴的に変化した遺伝子の発現分布
擬時間経過に従って特徴的に発現が変化していた遺伝子の発現分布を示しました。擬時間経過による発現変化に対応する細胞集団で特徴的に発現していることが確認されました。
RamDA-seq法により、近年、疾患との関連が注目されつつあるnon-coding RNAや スプライシング異常を1細胞レベルで検出することが可能になりました。従来のシングルセルRNA-seq法では検出できなかったRNA種やRNA領域で、全く新しい1細胞レベルの知見が得られることが期待されます。
